「ギャッ」
「はい後ろ向いて。言ってるでしょ、アタシ女の子に興味ないのよ。遼ちゃんくらいが好みだわ」
「遼ちゃんは女の子が好きらしいので片想いですね」
「あら生意気なこと言うじゃない」
「うぐっ」
唐突にウエストを絞められた。やめて吐く。ついでに腹部から縊り殺されるかと思った。背後のよしりんさんの手からシュッシュッとリボンを絞めていく音がする。
「貴女、遼ちゃんの彼女じゃないんだってね」
「そうです、見てて分かりますか?」
「分かるわよ。貴女、別に好きな男がいるんでしょ。分かるわよ、そういうの」
「はは……」
オネェさんは思った通り他人の恋愛感情に敏感だ。
「まぁ遼ちゃんも貴女を好きってところまでいってないし、イーブンね」
「……まぁ、松隆くん達との契約ですし」
「そうね。アタシはそんなことどうでもいいわ。でも女の子が一番可愛くなるのは結局好きな男の子の隣にいるときなのよ」
月並みな言葉だ。凡人が天才を称えるなと言った人の口から出てくる言葉とは思えない。
「その意味で、貴女達はベストなカップルになんかなれないわ」
「……戦う前からはっきり言わないでくださいよ」
「あら、他のカップルがベストだなんて一言も言ってないじゃない」
思わず振り向いてしまいそうになったけれど「前を向く! 崩れる!」という罵声に慌てて首を戻した。
「結婚したところで浮気だ不倫だ言って別れる夫婦がいるのに、高校生カップルがどいつもこいつも最高のお付き合いしてるわけないでしょ。暫定一番って程度よ、暫定」
「……よしりんさんは手厳しいですね」
「最後まで聞きなさいよ。暫定一番が何も悪いなんて言ってないわ。暫定が死ぬまで続けば永久欠番じゃないの」
譬えるにしては変だったし、そもそもスポーツ用語を取り出してくるなんてやっぱり男らしい……。
「カップルには暫定一番ですらない関係だってあるのよ。妥協の産物とかステータス欲しさとか見栄の塊とか、なんだってあるわ。貴女達の結託は友情だけど、それが他より美しくないなんて言ってないじゃない」
松隆くんがなんて説明してるのかは知らないけれど、私達の結託は友情なんかじゃない。御三家の結託は友情でも、私一人は違う。



