「つけました」
「よろしい。ドレスも決まったわ。遼ちゃんは漆黒で来るから、それに合わせてね」
ほら下着以外全部脱ぎなさい、と強い口調が命令する。いや体を見ればどう見ても男のよしりんさんの前で脱ぐのはさすがにちょっと、と答えようとしたけれど、目が反撃を許さなかった。
「……はい」
「ちょっと何でここで脱ごうとしてんのよ」
「え!」
「本当に貴女馬鹿なの? 女の子が肌を見せるのは好きな男を落とすときって相場は決まってんのよ!」
理不尽さに愕然としていると、有無を言わさずよしりんさんがビシッと部屋の隅に設置してあったドレッシングルームを指さす。親指で豪快にだ。ついさっき私から着物をひん剥いたのはどこの誰だ!と叫びたかった。でも呟くことすらできない。こっくりと静かに頷くと、「急がなくていいからちゃんと着るのよ」と注意されながらドレスを手渡された。
「……あの」
「アタシの選んだドレスに文句あるの」
「いえありません。天才的だと思います」
「凡人が天才なんて口にするんじゃないわよ」
「はい……」
普通のアパレルショップよりも随分とゆったりと大きなドレッシングルーム。カーテンを引いて早速着替えようとしたけれど、ドレスの着方が分からない。スカートとキャミソールと……仕様上ブラも捨てて、取り敢えず頭から被った。ストンと頭が飛び出て……あとは分からない。そっとカーテンの隙間から顔を出すと、化粧道具を並べているよしりんさんの後ろ姿がある。
「……あのー、よしりんさん……」
「何、早いじゃないの」
「……着方が……わかりません……」
「馬鹿なの?」
「馬鹿でいいから教えてください!」
よしりんさんは溜息と共に革靴で床を高く踏み鳴らしながら歩み寄ってきた。顔だけ出してる私に「亀みたいで間抜けよ」と冷たい一言をかけ、カーテンを引く。
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