それからどのくらい経ったのか、のろのろと目を開けると、真っ暗な教室の中にいた。
「うー……きもちわる……ていうか頭痛い……」
段ボールで遮光された教室の中で、ロッカーの取っ手から続く紐に手を縛られている。まだぼんやりとした意識のまま自分の状況だけ確認したところで、胃の中が引っ掻き回されるような嘔気が込み上げてきて「ウッ」と一人で呻いた。
「……信じられない」
自分の身に何が起こったのか、薄れゆく意識の中で視界に映った人物とセリフと、その他の記憶の繋ぎ合わせをすると、明白とまではいかなくともそれなりに明らかだ――舞浜さん達三人組にやられたらしい。差し入れのふりをして持ってきたのは睡眠薬入りのジュース。まさか桐椰くんの目の前でそんなものを飲まされると思ってなかったせいで油断した。
耳には、舞浜さんの声がうっすらと残っている。
『桐椰くんには悪いけど、ここでじっとしててよ。御三家は好きだけど、姫は好きじゃないから』
そんなこと言ったって君達は一度生徒会に逆らってるじゃないですか、笛吹さんは君達の無礼を忘れてないと思いますよ、じゃあ御三家が覇権を握るべく私がちゃんとBCCに出るべきじゃないですか――なんて冷静になれば文句の一つや二つ、それどころか三つも四つも口から出てくるのだけれど、眠気というものはそれを一切合切抑え込んでしまえるらしい。
「そうだ……、松隆くんに連絡しなきゃ……」
ああ、違う、スマホはなかったんだった。やっぱり頭が回っていない。そもそもここがどこなのかも分かっていないことに気付いて辺りを見回したけれど、雑多な机と椅子の並びから物置っぽかった。余計にどこなのか分からなかった。
「……桐椰くんがお人好しに手伝いなんかに行くからこうなったんだ。松隆くんに怒られてればいいんだ、ざまーみろ」
……憎まれ口を叩いたところで、感情豊かに反応してくれる桐椰くんはいない。容赦ない罵詈雑言を淡々と投げつけてくる月影くんも、笑顔で冷ややかに毒を吐く松隆くんも。



