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「……で、どうなんだよ」
「もしそうだったら、どうするの」
「……お前はどんだけ俺に嘘吐けば気が済むんだよ」
「なんだ、怒ってるのそんなとこ? 幕張匠が嫌いだからとかじゃないの?」
「違うって言っただろ、それは。俺はお前に怒ってんだよ」
「私と遼くんは真面目なお付き合いをする必要ないって話だったじゃん」
「そうだな。でもこうも言っただろ、俺は目の前のお前を信用するってな」
それはまるで、信用させてくれ、と。目の前にいる私を信用すると決めたから、その信用を揺るがす事実は否定してくれと、そう懇願しているように聞こえてしまった。
お陰で、呆れたような笑いは止まらなかった。本当に、なんでよりによってこの人とペアになってしまったのだろう。
「桐椰くん」
「……なんだよ」
「私、幕張匠の彼女なんてなったことないよ」
それでもなお懐疑的な瞳に、ちょっとだけ笑いは引っ込んだ。
「本当だよ。私、桐椰くんにたくさん嘘吐いてるけど、これは本当」
「……じゃあどうして」
「私を信用するために知る必要なんてないんだよ。全部知った後に、私を信用するか決めてくれればそれでいいよ」
桐椰くんはどうせ私が本当の話をしても私を軽蔑したりしない、とは思う。月影くんはきっと興味なんてないだろうし、松隆くんは謎が解けてすっきりするくらいだろう。
だからこそ、口も重くなるというべきか。彼方の言ったことは本当なのかもしれない。桐椰くんは大事な友達だ。だから変に余計なものを背負おうとさせたくない。これは自惚れかもしれないけれど、どちらかといえば桐椰くんに対する期待と信頼だ。
にへっ、と久しぶりに下手な作り笑いをすれば、桐椰くんは仕方がなさそうに閉口した。



