「……遼くんが会いたがってるのは私だよー、なんて言ったら、罪悪感がないことまで全部話さなきゃいけなくなるよ」
「だからそれは必要ないだろ? 黙ってればいいじゃん」
「……なんか狡い」
「狡くないだろ。好きな人を秘密にするなんて、小学生でもやってる」
それとこれとは話が全然別だ――。口を尖らせるけれど、彼方は肩を竦めるだけだ。
「そんなことを狡猾だなんて感じる必要はない。そこは話す必要がなかったから話さないこと、でいいんだ。そうだろ?」
「……そうだけど、なんか、」
「だーからさ、亜季ちゃん、認めろよ」
ポン、と、彼方の大きな手はもう一度私の頭に乗る。
「亜季ちゃんはちゃんと前に踏み出してるよ」
「……何でそんなこと言えるの。何年も私に会ってなかったくせに」
「どうでもいい人間なんて、都合のいい言葉遊びと嘘で誤魔化して騙して操っちゃえばいいじゃん。そうだろ?」
彼方は一瞬だけ底意地の悪そうな笑みを見せた。その瞬間は、太陽のような彼方に一点の闇が見える瞬間。
「それをするのが狡いって思う時点で、俺の弟は亜季ちゃんの友達なんだよ」
それでも、彼方は太陽だから。だから、私にそんな優しいことを言える。
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