第一幕、御三家の桜姫



「そんな白けた反応しないで。可愛いのに台無しだぞ」

「彼方って何も変わらないよね……」

「そんなことないだろ、結構変わったぞ。意外ともう高校の制服着れないし。ああ、でも、亜季ちゃんほどは変わってないかもなあ」


 中学生当時の私を思い出すように、彼方は視線を彷徨わせる。


「あの時から絶対将来可愛くなるって思ってた俺の目に間違いはなかったね。まああの時から可愛かったけどな! モテてるだろ、さては!」


 彼方は誰にでもそう言う。本気だから真に受けてもいいけど、真に受けてはいけない。


「そんなことないけど。こんな格好だし」

「またまた。言葉遣いとかもちゃーんと直してるし、女の子らしくなったし、可愛い可愛い」


 断りもなく、ごく自然に彼方は私の頭を撫でた。普通ならこんなことをされるのはイヤなのだけど、彼方にされるのは平気だから本当に不思議だ。


「……変わってないね、彼方は」


 私は何もかも変わったのに。それこそ、言葉遣いなんて意識的なものから、そうでないものまで、すべて。

 だから「変わってない」は誉め言葉のようなものだったのだけれど、彼方にとってはそうではないらしく、ちょっとだけ「なーんだそれ。俺だってかっこよくなっただろ」と心外そうに笑われた。彼方が更にかっこよくなっているのはその通りだけれど、調子に乗るので黙っておいた。


「つか、亜季ちゃん四組なんだって? 遼と同じじゃん」

「……ウン、そうだヨ」


 動揺したせいで変な声になった。


「アイツどう? クラスで浮いてる? ヤンキーって怖がられてる? それともモテてる?」

「全部かな」

「どうすればクラスで浮いて怖がられながらモテるんだよ……」


 御三家という生徒会の敵としてクラスで浮いてるし、赤井くんとかを問答無用で脅迫する様子をみんな見てるから怖がってる人もいるし、それなのに不動の女子人気を博している。私だって不思議だ。


「じゃ、アイツ彼女できた?」


 ぐっ、と詰まる。ここで御三家のために私が桐椰くんの暫定彼女ですなんて言えない。

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