第一幕、御三家の桜姫



「いやーマジでびっくりした! こんなところで会うとは思ってもみなかったからなぁ」


 文化祭から離れた特別校舎の階段で、彼方と隣り合って座り込む。前回は桐椰くんだったのが今日はその兄に代わってるなんて妙な偶然だと思う。

 彼方は──本当に、話に聞いたとおり、桐椰くんとは全然似てなかった。彼方のことを忘れたことがなかったとまでは言わないけれど、数少ない友達として記憶していたし、きっと仲も良かった、それでも桐椰くんのお兄さんの名前を聞いても彼方に結びつかなかったのは、ひとえに二人が似ていないから。

 そもそも顔が似てない。桐椰くんは意外と色が白くて金髪も似合うけど、彼方の肌は小麦色で金髪はきっと似合わない。顔の造形も、桐椰くんはどちらかというと綺麗めなのに対し、彼方は全体的にまとまっていてカッコいい。そして桐椰くんが比較的細いのに比べて、彼方は男らしさがある程度にガッチリしてることが服の上からでも分かる。

 あとは決定的に性格が似てない。桐椰くんがまるで子供みたいに感情を露わにするのと違って、彼方はいつだって飄々としてる。なにより、桐椰くんなら女の子に片っ端から声をかけていくなんてことは絶対しない。そもそも、彼方は自他ともに認める女好き。ただ、心底可愛いと言っているし、心底好きだと思っているのもなんとなく伝わってくるので、誰も憎めない。なんというか、彼方にしかない嫌味のなさみたいなものがある。

 現に、有希恵相手にあの有様だったわけだし……。当時から全く変わってない彼方に相槌も打たず白い目で見ていると、怪訝そうにその眉が寄った。


「なに、亜季ちゃん、なんでそんな冷たい目で見るの」

「いや……本当、遼く──弟と似てないなって……」

「そう、よく言われるだよなー。俺は母親似でアイツは父親似だからな。(はるか)――末っ子も合わせて三人で並ぶと似てるって言われるんだ」


 ふぅん、と頷く。桐椰くんは父親似なのか。今はもういない、桐椰くんが憧れた父親。


「まぁそんなことはどうでもいいんだよ。すっかり変わったなあ、亜季ちゃん!」

「……どーも」


 転校してきた事情等々を聞いた彼方は、あの時みたいに何も否定せずにうんうん聞いてくれた。そういうところが、彼方がみんなに好かれる理由だ。

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