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「あ、君、ひま?」
いよいよ私には関係ないかな、なーんて考えていると、その人が私に向き直った。同時に、有希恵がやっと私を見て、そのまま青ざめていく。どうやら私がいたことに気付いていなかったらしい。その目からは、なんでいるの、なんで見てたの、ザマアミロって思ってたの、やっぱり敵なの、守ってくれないの──なんて聞こえてきそうだった。
「最初、助けようとしてくれてたんだよね? 割り込んでごめんな?」
その有希恵と見つめ合っていたところに、ナンパ師その2が割り込んでくる。
いや別に、全然、助けるつもりなかったんで──なんて内心答えながら顔を上げて。
「……あれ?」
「ん?」
その快活な笑顔に、一瞬脳がストップした。
綺麗に整っているというよりは全体の空気感もあってカッコイイ感じの顔で、体育会系にいそうな雰囲気だった。男らしさはあるけどむさくるしさはない、例えば王子様みたいな松隆くんとは真逆だ。
「売り子じゃないなら二年四組まで案内してくんない? 花高生だろ?」
ひょいと、私の前に有希恵からもらったチラシを翳してみせる。今度は私のナンパだ。
ただ、そんなことはどうでもよくて。私はただただ記憶を探ってしまっていた。
「ん? どした?」
この、顔。みんなの関心を引き付けて、いるだけで周りを明るくしてしまう雰囲気。響く声。そして何よりも、女子とみればなんでも口説くその軟派さ。
「どうした、フリーズしてる? おーい?」
パタパタと私の目で手を振られ、完全に記憶と現実が一致した。
「彼方じゃん!」
次の瞬間、状況も忘れて、名前が口をついて出た。
キョトン、と相手が呆気にとられた顔つきになった。なんだ、どっかで会ったことあるっけ、なんて考えているのがその表情から伝わってくる。どうやら私には気付いていないようだ。
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