| (.)
「大丈夫、みんな四組に集結してるはずだよ」
「……あぁ、和風喫茶なんだっけ? アイツ何の恰好してるの? 新選組?」
だったら人気あるのも頷けるね、と松隆くんは顎に手を当てしみじみと言う。同性だというのに異性から見た魅力が分かるらしい。ただ、残念ながらウチのクラスは本当にただの和風喫茶だ。
「ううん、書生」
「……アイツが?」
「うん」
「あの髪で?」
「うん、笑っちゃうでしょ」
「くっ」
その、思わず零れてしまったかのような笑みに、少しだけドキリとした。そうだ、この人がいつも浮かべているのは、同い年とは思えない仮面の微笑で、心の底から笑ってることなんてない。それなのに、桐椰くんが金髪で書生の恰好をしていた、ただそれだけのどうでもいい情報に、こんなにも笑う。
「金髪の書生か……顔が良ければそれでもいいのかな」
逆に、だからこそ、松隆くんの世界にはあの二人と透冶くんしかいないのだと理解させられる。
「松隆くんはもしかして男が好きなんですか?」
誤魔化すための冗談だったのだけれど、松隆くんの笑いはすぐさま引っ込んだ。
「やめろ桜坂。客観的な意見を述べただけで他意はない。まだ桜坂のほうが恋愛対象になる」
「はいリーダー、男よりマシと言われても嬉しくありません」
今度こそ手を振って松隆くんとは別行動になった。とはいえ、松隆くんに話したことは本当で、文化祭を楽しむがらではない私にとっては、暇で暇で仕方がない時間だ。しかも、花高生からは「あ、御三家の姫だ」と嫉妬半分嫌悪半分みたいな目も向けられるので居心地も悪い。ちなみに前者は女子、後者は男子。
「馬鹿だなー、みんな。私ただの下僕なのになー。そんなになりたいなら最初から生徒会にしっぽ振らなければ誰だってなれたのになー」
そんな視線から逃れるべく休憩スペースに入り、そのままぼーっと座り込んで過ごしてしまった。一応、休憩スペースでは宣伝もしてはいけないとされているので、休憩スペースとしての効用は最大限に発揮されている。



