第一幕、御三家の桜姫


| (.)

 でもそれをあの人の冷たさだなんて言うことはできない。きっと当然だし、ある意味私が招いた結果でもある。だから詰るようなことではないし、そのつもりもない。


「それでも好きって言えるんだ? もう助けてくれないのに」

「二度目がないことを理由に一度目の恩を忘れたりしないよ」


 へらっと笑ってみせれば、代わりに松隆くんが笑顔を引っ込めて考え込むように顎に手を当てる。


「……桜坂、その人は文化祭に来ないの?」

「え? さぁ、どうなんだろ。文化祭があることは知ってるけど」


 たとえ来たとしても私とは会わないだろう。


「でもどうして?」

「珍しく本当のことを教えてくれた桜坂を精一杯綺麗に着飾って、それだけ焦がれてる相手に見せつけるのもありかなと思ってさ」


 その提案には呆気にとられたけれど、すぐに笑ってしまった。


「見せつけるって。別に恨んでなんかないよ」

「じゃあどうしてそんな辛そうな顔で告白してるんだ?」

「お子ちゃまだな松隆くんは。悲恋の原因がいつだって相手の悪意にあるわけじゃないんだよ」


 松隆くんは目を丸くした。ついでに「それはそうかもね」と納得する。


「……その人とはもう会わないの?」

「会うかもね。会わないとは言ったけど、約束すれば必然になるわけじゃないもん」

「……今日の桜坂は意味深な言葉が多いね」

「私いつでも大真面目に意味深なこと言ってるかもよ? 意外とね!」


 ニッといつもの笑顔を張り付ければ、松隆くんは頬を緩める。


「……ふぅん。そっか」

「というわけでリーダーは見回りご苦労様です。私は一人でも楽しく文化祭で遊びます」

「了解、下僕ちゃん」


 キリッと敬礼すれば敬礼して返された。珍しくノッてくれた。その呼び方はともかくとして、だ。


「じゃーね、松隆くん。遼くんも言ってたけど気を付けてね、リンチとかされないように」

「そこまで油断してないよ。桜坂も気を付けてね、遼のファンとか」


 言われてハッと気が付く。そうだ、桐椰くんは無駄にファンが多い。一人なのをいいことにそれこそリンチでもされては堪らない。ただ、肝心の桐椰くんは和服喫茶でなんともおいしい役をやっている。