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「遼くんメンタル弱いなー。男の子なんだからもっと強く生きようよ」
「うっせーな。お前みたいに図太く生きられるか」
「人生太く短く生きようね!」
「そこまで極端なこと言ってねぇだろ……つか意味違うだろ」
はぁ、ともう一度重い溜息が零れた。
「……お前、正直よくやるよな」
「何が? カップルごっこ? 意外と遼くん虐めるの楽しいよ?」
「褒める気が失せた」
「えっ、褒めてくれるつもりだったの? いいよほらどんとこい!」
「……お前、それなんなの? マジで」
胡乱というべきか、怪訝というべきか──はたまた不審というべきか。そんな目が、探るように私を見た。桐椰くんの言う〝それ〟とは、どれだろう。
「なーにが?」
「……お前のその性格はわざとなのかなんなのかって聞いてんだよ」
──思わず、きょとんとした。
「……それって演技なのかってこと?」
「そーだよ」
「具体的には? いちいち遼くんの神経逆撫でする言葉を選びたがること? 意気揚々と遼くんの傷抉っちゃうこと? それとも──」
「そういうのも含めて、全部」
思わず眉を顰めた。桐椰くんは──私が動じないのが予想外なのか──少し視線を彷徨わせた。
「だから……なんつーか……お前、総と同じ匂いがする」
「じゃあ松隆くんも桃の香りのシャンプーなのかな? 鎖骨フェチって言ったけど匂いフェチなのかな遼くんは!」
「俺は真面目に話してんだぞ」
茶化された桐椰くんの声が、ワントーン下がった。キュッと、喉が引き締まる。
「……松隆くんと同じ匂い?」
「お前、どーせ分かってんだろ。総のあの顔は演技だって」
「うん。分かってるよ」
松隆くんのあの優しい表情が演技だなんて、多分私だけじゃなくて勘のいい人は会えばすぐに分かる。そしてそれは笛吹さん事件で突き付けられた。御三家と私との間に結ばれた契約の意義を果たすため、私と舞浜さん達への暴力には目を瞑る。
その瞳は躊躇のなさを具現化したように怜悧で。偽善など欠片もないその残酷な横顔は酷く美しい。
だから、桐椰くんの言葉の意味はよく分からなかった。



