「マジで疲れた。体力じゃなくて精神力消耗した。マジでふざけんなくそっ」
「そうカッカしないで遼くん。ほら記念写真あげるよ額に飾っとこ」
「藁人形と五寸釘の刑だな」
「自分も映ってるからね! 自分に呪いがかかることも厭わないくらい恨むのはやめようね!」
よりによってブーケを手にした私の頬をつまんだ状態で写真を撮られ、それが教室に飾られてしまった、という事態に桐椰くんは大層ご立腹だ。ついでに重版──大量印刷されて半分に切られ、頬をひきつらせる桐椰くんの美しい横顔としてギャラリーに配布された。もちろん黄色い悲鳴が上がり、切り捨てられた私の部分が無残にもゴミとして散乱した。酷い話だ。ついでに桐椰くんはポケットに手を突っ込まないと落ち着かないらしいけれど、今の状態でそれをやると、寒い日は彼女の手と共にポッケの中へ!というシチュエーションになるからできない──というのも苛立ちを掻き立てている要因らしい。
「くそっ……総のヤツ何か奢らせてやる……」
「でも生徒会を潰すのは遼くんも含めて御三家の悲願じゃん。それに松隆くんは遼くんが元カノのイチャつきぶりを見たくないって言ったから代わってくれてるんだよ? 感謝だよ?」
「お前はよくそうペラペラと人の神経を逆撫でする言葉が出てくるな」
「もしかして才能かな」
「迷惑な才能だな。……ちょっと休憩」
声とも音とも分からない喧騒から逃げるように、桐椰くんは特別校舎に向かった。特別校舎は文化祭期間中は使われない。立ち入り禁止のテープに構わずひょいと中に入り、少し薄暗く冷たい階段に二人して座り込んだ。確かに、隣の学校で文化祭をやってるのかな、と思えるくらいには静かだった。はぁー、と桐椰くんは重い溜息と共に項垂れた。引っ張られたブレスレットがジャラッと音を立てた。
「……このブレスレット、邪魔だな」
「邪魔だね。御三家に手先の器用な人いないの? ちょっと外してまたくっつけてってできないかな?」
「駿哉は得意そうだけど……やめとこーぜ。バレて失格になったらあの羞恥プレイの意味が……」
随分と桐椰くんにはダメージを与えてしまったらしい、あの競技。金色の前髪に僅かに隠れる顔は二日酔いみたいだ。



