「じゃあここに立って! これ持って。準備しますから少々お待ちくださいねー」
そんなことを考えて上の空だった私の手には小さなブーケが押し付けられた。使いまわすために造花なのだけど、ガーベラを模して明るい色でまとめられたそれは素直に可愛い。桐椰くんは「マジで羞恥プレイだな」と、厚木さんが離れたのをいいことに舌打ちと共に毒づく。そんな最悪の態度の桐椰くんを目にしていながら、ギャラリー女子は騒ぐのをやめない。
「……遼くんって女子の鎖骨好きなんて言っちゃう変態なのになんでモテるんだろうね?」
「うっせぇな。別にいいだろフェチなんてそんなもんだろうが。つかなんでこのタイミングで唐突にディスるんだよ」
「遼くんに頭突きされた頭が悲鳴を上げてるんですぅー。優しくない男はモテないんだからね!」
「だからお前にそういうこと言われるとムカつくんだよ。モテてから言え」
「分からないよ? 三日目のコンテストに出るときは超可愛く変身しちゃってて学校中の男子イチコロかもよ? 遼くん彼氏として立場ないかもよ?」
「だからうぜーんだよお前のその思考が! 大体イチコロって言わねぇよ今時」
「はぁー言葉を馬鹿にするなんてそれでも夏目漱石好きなの? 文学少年気取りなの?」
「よし分かった限界だ殴らせろ」
「はやまらないで痛たたた──」
さすがに観客の前で彼女を殴るわけにもいかず、代わりにいつものように頬をつままれた。一瞬で済む殴打に比べれば、正直痛みの持続するこっちのほうが辛い。
「すいませんすいません、放してください」
「悪いことしたら土下座だって習わなかったか?」
「そんな極端な謝罪教えられるわけないよね!? ほ、ほら遼くんシャッターが──」
パシャッ、と。
私達二人の騒々しさを打ち切るように、第一関門突破を示すシャッター音が響いた。
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