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「お疲れ様でしたー。タブレット回収しますね」
ひょいひょい、とタブレットを返却していると、桐椰くんが「あー、疲れた」と文句を言いながら頭で圧し掛かってきた。
「お疲れさま遼くん、疲れたね。主に私の左手が」
「俺を労われ、俺を」
全部予習通り合わせてやったんだから、とは付け加えられなかったけど、そう言いたいのはよく伝わってきた。
「さて、優勝した犬さんチームには記念撮影が待っています! どうぞあちらへ!」
──そこで、試練が待っていたことに気付かされた。ガーッ、とスクリーンが持ち上げられる音と、「マジで付き合ってんのかな?」「だって正答率高いじゃん」「口裏合わせてんじゃねーの」「喋っちゃダメだったろ」と口々に簡易論評する声と、「あたしも桐椰くんとあの写真撮りたい……」とできるなら代わってくださいと言いたくなるような呟きと。どんなに仲良しカップルっていってもお互いの好きなものが何でもかんでも一致するわけないし、予習してきた偽物カップルのほうが正直有利だよね!と思っていた私達にとっては最初で最後の試練だった。
「……それ、撮んなきゃいけねーのかよ」
「撮りたくないんですか? 優勝しちゃうくらい仲良しカップルなのに?」
まさか生徒会に勝つための演技?とでも言いたげな厚木さんの声音に、桐椰くんが素早く立ち上がった。
「痛い!」
「撮る」
腕を引き摺ったことへの恨みを込めて睨み上げると「ほら早くしろ見せ物なんて長くやってられるかさっさとしろ」と鬼のような目が脅してきた。目は口ほどにものをいうとはよく言ったものだ。ついでに桐椰くんが不良なんだってことを、改めて思い知った。私は両手を上げてお手上げ。
「……はい。仲睦まじく撮りましょう、遼くん」
「さあさあこちらへどーぞ!」
厚木さんが楽しそうにウェディング飾りの前に誘導してくれる。ただ、ブレスレットが千切れないよう、早速両手を繋ぎ直していたのが気に食わなかったのか、私達の両手に一瞬向けられた視線は妙に鋭かった。
ずっと一緒にいるから感覚が麻痺してくるけれど、やはり桐椰くんは大人気御三家の一人だ。意識して聞かないようにしていた野次馬の声は桐椰くんへの賛辞か私への酷評。私は偽物だからいいけど、いつか本気で本物の彼女になりたいって人が出て来たとき、桐椰くん──御三家はどうするんだろう。特別扱いすればその子の立場はなくなるのに、どうせ守り切れるわけないのに、それでも彼女にしたいと、彼氏になりたいと、思うのかな──。
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