第一幕、御三家の桜姫


| (.)

「はぁ!?」

「不正行為にみなしますって言ってもさ! 今の会話のどこにも不正を疑う話なかったじゃないですか!?」

「不公平だから一律不正行為で0ポイントです。はい、そろそろ三十秒ですね、解答オープン! お猿さんチームは二人共新村(しんむら)動物園! お見事、10ポイントです! 雉さんチームも二人共いわしのからくりテレビ! 10ポイント獲得です!」


 ──かくして、BCCは幕を開けたわけだが、それは最悪の滑り出しだった。

 それから、桐椰くんは言葉の代わりに後頭部による頭突きという形式でコミュニケーションを取ることに徹してきた。お互いダメージを食らうし腹が立ってること以外なにも伝わらないし痛いと言えば不正行為だし、最悪のコミュニケーション方法だと思う。そのお陰というべきかなんなのか、私と桐椰くんはしっかり予習の成果を見せつけるべく、立て続けに六問正解して60ポイントを獲得した。


「さぁ、犬さんチームとお猿さんチームが60ポイントで並んでますね。雉さんチームは40ポイントとちょっと出遅れていますね。まだ挽回のチャンスはあります、がんばってください! では次、第八問!」


 次も予習通りにやれよ、とばかりに桐椰くんがゴツンと頭をぶつけてきた。そんなこと、痛覚が麻痺するんじゃないかってくらい殴られ続けた後頭部がよく分かってる。


「好きな小説家は?」


 ……予習範囲外。しまった、王道なのに過去問になかったせいで対策してなかった。私の好きな小説家は夏目漱石なんだけど。桐椰くんに小説のイメージない! ていうか桐椰くんみたいに横暴な人が片手に文庫本持って読書してるなんて……松隆くんなら有り得るけど。背後の桐椰くんが微動だにしない。ヤベェ予習範囲外だって思ってるのが伝わってくる。今までは「はいきました!」とすぐさま回答を書き殴っていた私達が突然静止すれば怪しまれるのも当然、厚木さんが訝し気に私の顔を覗き込む。


「どうしました?」

「いえ……なんでも……」


 ここで動揺して予習してたなんてバレたら──どうなるんだろう。別に予習禁止なんて言われてないし。ただ、偽物カップルなんて知られたら心証悪くなって優勝しにくくなっちゃう。それは避けなければならない。あとはピュアッピュアな水泳部カップル・お猿さんチームにはなんだかちょっと申し訳ない。……さて、それはさておき。何を書けば正解なのか分からない。いや──〝正解〟なんて言ったらお猿さんチームに失礼だ。あのチームは正真正銘相性のいいカップルなんだ。