第一幕、御三家の桜姫


| (.)

 次の瞬間、臨時放送を告げる電子音がスピーカーから響いた。

──文化祭をお楽しみのみなさん、お知らせします。ただいまより、三年二組において御三家カップルによるBCC競技が開始されます。参加・観戦をご希望の方は三年二組までお越しください。繰り返します──

「は!?」


 署名していた桐椰くんが素早くスピーカーに顔を向けた。次いで厚木さんを振り向く。


「今の放送なんだ? どういうことだよ!」

「あー、私も不本意なんだけど、企画役員長の笛吹から言われてるらしいの。桐椰くんが参加するときは全校放送するようにって」

「なんのためにだよ!」

「不正を見張りたいんじゃない? だって御三家と生徒会って学校の覇権賭けて勝負してるんでしょ?」


 桐椰くんが唖然とした。私だってびっくりだ、何でそれがバレてるのか。正確には賭けているものは違う。そして確かに桐椰くんは「生徒会を負かす」とは宣言したけれど、〝覇権争い〟は少し意味が変わる。そしてこれがそういう勝負だってバレたら誰も票を入れてくれないと思って、そのために私と桐椰くんはこんな演技までさせられてるのに。それなのに、どうして。


「それは……そう、だけどな……」

「でっしょー? でも安心して、私は御三家派だし。別に不利なことはしないよ?」

「そういう問題じゃない……」


 放送を聞いて駆け付けた生徒のために教室の窓がどんどん開けられた。早速集合した生徒は「出た、御三家」「桐椰くんこっち向いてー」「なんだ彼女可愛くないじゃん」と思い思いに話してる。


「この野次馬の中でやれってのかよ!!」

「すいませーん、参加希望でーす」


 その中から出てきたカップルには見覚えがあった。確かBCCの受付にもいた気がする。水泳部のカップルだ。水泳部らしい屈強な肉体の男子と華奢な女子。確か三年生だっけ。

| (.)