「……」
「……っ、会いたかった…奏斗…」スッー
彼女はまるで数年ぶりの再会を果たした
恋人の様にそう、涙ながらに囁く。
俺は抱きしめ返すわけでもなく
会いたかったと言っている相手に合わせるでも
甘い言葉を囁くでもなく
ただただぼーっと考える。
こんな名家のお嬢様がただのDOLLに
うつつを抜かしていて大丈夫なのだろうか。
チュッ
「…」
小さなリップ音で思考は
そのお嬢様の元に戻り――――。
「可愛い可愛いわたしの奏斗『DOLL』」
あぁ、今日も……かぁ。
言葉ではちゃんと名前を呼ばれてるはずなのに
心に響く声はいつも違う言葉だ。
ほんと、嫌気がさしてしょうがない。
