ゆる彼はエモく尊い【完】



そしてその後さりげなく魚を取り分けて、俺に差し出してくれた彼女は─…



「魚の食べ方なんてみんな下手だよ。出来る人がやればいいだけのことだから…そんなに気負いしないで」



本当は俺が不器用だってことに気付いていて…それでいて、ダサいとかかっこ悪いという言葉を言うわけでもなく…ただ、同等の人間として扱ってくれた。



─…たったそれだけのこと。



それだけのことが…俺にとってはとても…嬉しかった。



初めてだった。誰かに助けられたのも…それが下心からくるものではなく、純粋に”みんな”と同じ扱いをされたことも。…全部初めてで、心が満たされた。



それからは…彼女のことで頭がいっぱいになった。もっと知りたい、もっと俺を知って欲しい。



その欲はやがて恋心に変わり…俺はひたすら彼女のことを影から見つめ続けていたんだ。