「……俺さ、結花と付き合うまで…本当にただの劣等感にまみれたクズ男だったんだ」
並んで座っている間のスペースに買ってきた食材を広げながら…少し寂しそうに瀬戸くんが語り始めた。
「元カノとかにも”思ってたのと違った”とか言われて振られたりしてさ…恋愛に対して億劫になったというか、憧れみたいなものが無くなってたから…ずっと一人でいいと思ってたし、誰とも付き合うつもりなんてなかった」
初めて聞く、瀬戸くんの恋愛に対しての価値観。きっと彼の素敵な容姿が周りの期待を勝手に煽っていたのだろう。
「成績とか、順位が落ちる度に担任に心配されたり…スポーツも。必要以上に期待されるのが嫌になって、球技大会はいつも仮病で欠席してた。」
「……それは、知らなかったな」
「そう…気付かれないようにしようと、必死だった。一度頂点に立ってしまうと、そこから落ちることは許されない…みたいな。そんなルールどこにも存在しないのにさ…自分で勝手に病んでた」
私みたいな凡人には、瀬戸くんの苦しかった頃の気持ちなんて…一生かけても理解出来る日は来ないだろう。
「でも…結花だけは、俺自身を見てくれた。他の奴らと同じように扱ってくれた。」
「……私?」
「そう、ゆいちゃん…あの日、あの瞬間からゆいちゃんは俺の特別な人。もっと知りたいと思ったし、俺を知って欲しいと思った…そんなの、初めてだった。多分これ、あれだと思う─…初恋。」
……あの日、あの瞬間…というのは?
一体どのことを指すのか不明ではあるが、初恋と言われたことに驚き…隣に座る瀬戸くんの顔を凝視してしまう。



