「ねぇおろして、おろして」

「喘鳴ひどいなぁ」

「なにそれ!いいからおろして」

「ぜぇーぜぇーいってる
吸入しろ」

「するからおろして」

「車まで連れてってやる」

車までの距離、約30メートル
おろしてくれる気配もなくそのまま車の助手席におろされた

幸いなことに人はいなくて見られることはなかった

「...はぁ...はぁ
恥ずかしいからやめて」

バンッ

ドアを閉められて
愁くんが運転席に座った

「はい、これ」

吸入器を渡された

シュ
シュ

少ししたら落ち着いた

「きり明日、仕事だろ?」

「...うん」

「今から海行ったら帰宅は12時過ぎる」

「...」

「近々、連れていってあげるから今日はやめとこう」

「...仕事行くのはいいの?」

「本当は行って欲しくないけどダメってばっかり言ってるときりも前向きに頑張れないだろうし...」

「...」

「ただその代わりに俺と一緒に住むのが条件かな」

「愁くんの家で?」

「きりの家にお邪魔しようと思ったけど
きりが俺の家来てくれるなら助かる」

「でも愁くんあんまり仕事で家いないでしょ」

「忙しかったら帰れないけど
そうだなぁ...週に2日くらいは病院に泊まりかな」

「...」

「俺がいない2日は実家に戻ってきて
おばさんの美味しいご飯食べておじさんの
面白い話聞いてゆっくり家族で過ごせばいい」

「...」

「どうする?荷物まとめてくる?」

「今日から泊まるの?」

「うん」

「わかった...まとめてくるから待ってて」

愁くんが私の家に泊まるとなると
病院まで結構かかるだろうし
そこまで迷惑かけるわけにはいかない

家に戻るとお母さんは晩御飯の食器を片付けていた
お父さんはお風呂に入ってるみたい

「お母さん、今日から愁くんのところに泊まる」

「そう、わかった、仲良くね」

私は上に上がって自分の部屋から必要なものをまとめた