「心臓の検査はしない」
「なんで?」
「心臓悪くて入院してるんじゃない」
「喘息の合併症でたまにあるんだ」
「嫌だ、退院する」
「だからまだ難しいんだって」
なんで愁くんがイライラしてるわけ
約束と違うことしてるのはそっちでしょ
ちゃんと喘息の治療も検査も受けて
過ごしたし意味がわからない
「とりあえず検査の結果みてから話すから
検査してきて」
「嫌だね」
「きり。」
「...」
無視をしてまた寝に入った
退院はさせてもらえそうにない
でも検査は絶対しない
寝ることしかやることない
「わかった、じゃあ循環器の先生に繋ぐからそっちで見てもらって。」
「...」
何考えてんのかわからない
それから夕方まで音沙汰もなく1日過ごした
お昼ご飯も朝と同様、袋に入れて捨てた
不思議とお腹がまったく空かない
「失礼します」
知らない男の人の声
「あけますね」
部屋に入ってきたのは
30代くらいの医師だった
「初めまして、循環器の
内藤 和也(ないとう かずや)です。
よろしくお願いします。
担当の高橋先生からお話聞いて
心臓の病気を見にきました」
「私は心臓悪くないです」
「それを証明するために検査させてください」
「嫌です」
「おい、内藤先生まで困らせるなよ」
押し問答していると愁くんも部屋に来た
敵がまた増えた
「ははっ、大丈夫、慣れてるし困ってない」
「すみません、ありがとうございます。」
「きり、内藤先生は俺の大学の先輩だ」
「だから?」
「なんでそんな反抗的なわけ?」
「1週間で退院できるって言ったの愁くんでしょ」
「だから状況が変わったの」
「そんなの私には関係ない」
「きりの身体のことでしょ」
「約束守ってよ!」
「...」
その後無言が続いて気まずい時間だ
「川口さん、痛くも痒くもないんだけど心臓の検査やらない?」
内藤先生が話し始めた
「やりません」
「その理由は?」
「1週間って約束だったのにいきなり心臓の検査してって言われて受け入れられない」
「そうだよね...
じゃあ一旦、リフレッシュするために一時帰宅する?」
「え?」
「高橋先生、喘息は退院でいいんでしょう?」
「喘息だけだと退院でもいいんですけど...」
「じゃあ俺が責任とるから一旦約束通り、家に帰ろう
ただ一つ約束!
今日必ず検査を受ける
その結果で今後もう一回入院するか通院治療するか高橋先生と決めようかな
川口さんいい?」
「...」
「高橋先生はなるべく川口さんの近くにいて体調管理して欲しい。発作に気をつけて見守って」
「...はい」
「そのかわりちゃんと治療してね」
「...」
「約束できる?」
「わかりません」
「どうして?」
「私は入院当初の約束は守ったので
これ以上約束はしません」
「そっか...どうしようかな
高橋先生は明後日は休み?」
「いや、日勤ですね」
「じゃあ朝、出勤と同時に連れてきて」
「わかりました」
「とりあえず明日帰宅。
それは変わらずしないとちゃんと頑張ったんだもんな
検査は今日するか明日の退院前にするか
明後日の通院時するか」
「きり、今日心臓の検査するなら俺も担当医として退院許可出す。
やらないなら内藤先生が許可しても俺は許可出さない。退院させない」
「...」
「どうする?」
愁くんがうざい
なんで知らない医師勝手に連れてきて
その人は退院していいって言ってるのに
愁くんはさせないわけ
私に対する嫌がらせ?
...プルルル
内藤先生の電話がなって忙しそうに
部屋を出て行った
愁くんと2人きり
「愁くん、私のこと嫌いでしょ」
「嫌いじゃない」
「私、何があっても明日帰るから」
「じゃ今日検査しろ」
その命令口調がうざくてきもい
布団に潜り話すのをやめた
これ以上話しても愁くんに手を出しちゃいそう
グッと堪えて耐えた



