目がさめると朝だった
周りに誰もいない...
そっとベッドを降りて
部屋を出た
廊下にも誰もいない
携帯も手元になくて時間もわからない
ナースステーションを覗くと
看護師が数名いてた
「...あの」
携帯もなく愁くんもいなく
どうしたらいいかわからなかったから
声をかけた
「あっ、川口さんおはようございます。
いま、高橋先生が救急に呼ばれてしまって
下に降りたところなの」
1人の看護師さんが私に気づいて
廊下に出てきてくれた
「私の携帯とか財布とかの荷物が見当たらなくて...」
「あらら、高橋先生に聞いてみるわ
廊下は冷えるからお部屋で待ってて。
確認したら私、お部屋に伺うね」
「...あ、はい」
すごく優しそうな看護師で驚いた
小児科に入院してた時は
みんな優しい看護師だったが子供相手だからと思っていた
大人になってからの外来の看護師みんな忙しそうで
必要最低限以外話すことはなかったし
それになんだか冷たかった
こんなにも子供と大人で変わるんだと
悲しくなったこともあったけど
さっきの看護師は口調も声のトーンも
優しかった
トイレを済ませて部屋に戻るとすぐに
さっきの看護師が部屋にきた
「川口さん、カーテンあけるね」
「はい」
「いま、高橋先生に確認したら
先生が持ってるみたいなの。
でもいま患者さん対応で手が離せなくて
渡しに行けないからもう少し待ってって
言われたんだけど待てそう?」
「え、どれくらいかかるんですかね。」
「わからないなぁ...携帯くらいは欲しいよね」
「...はい」
「んー....」
「いや、大丈夫です。待ちます。
ありがとうございます。」
忙しいのにこれ以上、
看護師さんを困らせるわけにいかない
「本当?わかった。ありがとう。
なんかあったらナースコールおしてね。」
「...はい」
それから体感30分はゴロゴロしたものの
二度寝はできそうになく暇すぎて廊下に出た
さっきよりは人がいて
トイレや洗面、歯磨きをしている人が増えた
みんな点滴をしていたり
車椅子だったり大変そう
私も顔を軽く洗って歯磨きをして
そーっとエレベーターで下に降りた
救急外来が慌ただしくざわついているのがわかる
愁くんもあそこで患者さんを助けるために
一生懸命頑張っているんだ
近くの自動販売機で
ホットのお茶を買って中庭のベンチに座って
仕事のこと、病気のこと、いっぱい考えた



