次、目が覚めたら愁くんが白衣に着替えていた

「...」

「きり」

お母さんの声だ

「もう、心配させないで」

お母さんも涙目だ
ごめん

「きり、落ち着いてきたから
挿管ぬくよ。ちょっと苦しいけど頑張って」

愁くんが手袋をつけて
私の挿管チューブを抜いてくれた。

「声出せる?」

「...うん」

「よかった。
とりあえず点滴は抜かないでそのまま安静な」

「...うん」

「おばさん、俺仕事に戻るから
なんかあったらナースコールで呼んで」

「わかった、ありがとう。
愁くん」

愁くんは仕事に戻ってしまった。
謝りたいのに。
なかなかタイミングがない

お母さんが着替えを持ってきてくれたり
身の回りのことを準備してくれた

「お母さん1回帰るね。
また明日お父さんとくるから」

「うん、ありがとう」

だいぶ身体も楽になって普通に話せるようになった。

お母さんが帰った

意識がなかったためか
トイレも管が繋がれているため行けない

仕方なくナースコールを押した。

すぐに愁くんがかけつけてくれた

「どした?」

「自分でトイレに行きたい」

「あー抜こうか
ただその前に俺と話がある」

「なに?」

愁くんの真剣な声のトーンに顔に
少し怯えながら話を聞いた

「約束がある。
管を抜いても病院から逃げないで。
しばらく入院になるけどちゃんと治療しよう。
今のところは俺が担当医でみることになってるけど本当に嫌なら変えてもいい。
だから病院から逃げない。治療を受ける。
それを約束してほしい」


「...」

「何が不安?」

「別に...」

はぁ。
入院かー。
またつまらない日々がはじまる。
治療する気もないのになぁ

不安じゃない
不満がいっぱいある

「きり」

「わかったから早くはずして」

そんなの愁くんに言ったところで変わらない

「看護師さん呼んでくる」

ただ酷いことを言ってしまった
医者になってほしくなかった

そう口走った瞬間の
愁くんの悲しいそうな顔は忘れられない。