いつもよりも高く結んだ髪……
挨拶で微笑む顔……
袴姿で、大きな筆をたくましく振るう横顔……
真剣な表情のドアップ……
香月さんが書いた書……
書き終えた後の、安堵した笑み……
──かっこいい……
どれもかっこいい……
「ありがとうございます。見れて凄く嬉しいです……」
顔を赤らめるわたしに、常連さんは微笑んだ。
「それ、あげるからね」
「えっ!?で、でも……」
「あら、いらない?」
「いります!」
「うふふ、そうよね」
「コーヒー、お待たせ致しました」
「おーさんきゅさんきゅ」
「うめーなー」
「……何を見てるんですか?」
「っ!」
香月さんが屈んで顔を寄せてくると、生の香月さんにもまた赤面してしまう。
「なんだ美羽ちゃん、風邪か?」
「どうみても違うだろうがばかもの」
「うふふ、薫ちゃんの写真よ写真」
「写真?」
「こ、これです……」
パフォーマンスの、と伝えれば香月さんは照れくさそうに笑った。
「……お恥ずかしいですが、皆さんには見せられなかったので、写真越しでもお見せできたなら良かったです」
「そうよね、薫ちゃんすごいわっ」
「心臓に毛が生えたんでねぇか」
「んだな」
「それに──」
常連さんたちが少し盛り上がっていると、香月さんはわたしが持つ写真に手を被せた。
「っ香月さん?」
「……オーナーではなく、書道家の俺はどうだった?」
「……か、か……っこいい、です……」
湯気でそう……
でもそんなわたしを見て香月さんは満足そうに笑ってカウンターへともどっていった。



