まよいぼしカフェ




おぼつかない足取りでカウンターに歩み寄ってくる男に、わたしは警戒して体を後ろに引く。


「申し訳ありませんがまもなく――」

「兄ちゃん―酒だしな酒」


持ってこい、と男は手を払うようにしてみせた。


「すいません、そういう店ではありませんのでお帰り願えませんか?」

香月さんが優しくドアの方へ行くように促したけど、相当酔っぱらっている男はさっきより大きな声をあげた。

「そんなのいいから!……なぁ?」

「っ!」


後ろからわたしの肩に手をまわそうと近付いてきた男に、体が強ばった。

だが、男の手はわたしに触れなかった。



「大事なお客様のご迷惑です」

香月さんの手が、男の腕を掴んでいたから。