嬉しいけど、言葉が出てこない。 ありがとうとか、本当ですか、とか。うまいこと頭がまわらなくて。 香月さんはそんなわたしをまっすぐ見つめた。 「だから……夏休みとは違う形でそばにいてくれたら、と。前向きに考えて頂けたら嬉しいです」 「っ……」 何か、返事を……そう思い口を開いた時、乱暴にドアが開いた。 ガチャ――! 鈴の音が大きく響き、わたしと香月さんは何事かと目を向けると、 入ってきたのは、中年の男性だった。