「え、えっと……?」
「ご存知の通り人手はないですし、前みたいに急な電話をしたくても出来ない。……市川さんみたいな方に来ていただけたら俺も安心だな、と」
淡々と話す香月さんに、わたしは席から立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ。確かに何も進路は決まってませんけど……気を遣わせてしまったなら――」
「違いますよ」
優しい香月さんはわたしにセーフティとして提案してくれたのだと思ったけど違う。
ならどうして――
「一応、接客業なのでお客をみる目はそれなりにあると自負しています。……最初のあの日から今日まで、俺や常連さんたちとの会話の中で市川さんの人柄は俺なりにわかっているつもりです」
それに――と香月さんは続ける。
「このカフェを好きな気持ちが伝わるから、です」



