「はい……なんと言うか気になってて」 「実は、真っ白で……」 真っ白の言葉に香月さんは手を止めた。 「ご両親は何と?」 「いえ、わたしに甘いと言うか……やりたいことをやりなさいとしか。そこに甘んじてるわたしもいるんです」 俯く視界に、磨かれたグラスが置かれたのが見えた。 「俺からひとつ提案しても?」 「提案?」 なんだろう、顔を上げてまっすぐ香月さんを見ればいつもより真面目な表情で―― 「うちはどうですか?」 「……へ?」 思いもよらない提案に、すっとんきょうな声が出てしまった。