「もうお休みも終わりになりますね」
「はい、なんだかんだすぐでした」
「そういうものですよね。長期休みといっても」
わかります、と香月さんはいつもの笑顔。
「今日、良かったらギリギリまでお話出来ませんか?いつも常連さんに取られてしまいますから」
取られるって――いや、香月さんはたまにいたずらっ子のような人だから。真に受けちゃだめだ。
「大丈夫です。わたしも長く居たいなって思ってたので」
そう、夏休みも残り数日だからちょっとでもここで過ごしたい。
「よっこいせ、美羽ちゃん。わし帰るけど一緒に帰っか?」
「あ、わたしは――」
言いかけたところで、香月さんがわたしの肩に手を置いた。
「っと、後の時間は俺が予約済みなので譲って下さいよ」
「おや薫ちゃん、ジェラシーかい」
「はいっ」
ニヤニヤとする常連さんに、香月さんは素直に頷いた。



