カラン―― ドアを開ければ、常連さんたちが手を上げて挨拶してくれるから、わたしも笑顔で返す。 「美羽ちゃん、きたきた!待っとったぞー」 「お前さん隣空けなさいよぉ」 「そうね、こっちおいで」 「すいません、ありがとうございます」 同じ時間帯に一緒になれば席にお呼ばれして、お茶をして他愛もない会話をする。 それが当たり前のようになっていた。 けれど今日はそうは行かなくなった。 香月さんがドアの鈴の音を聞いて出てこない時はなかったのに、今日は出てこない。