舌に残った苦味を水で洗い流して、ペットボトルを詠に押し返す。彼は当たり前のようにボトルに蓋をする。


「おれ、婿入りしようかな」

「なんで」

「零とおまえと3人で同じ墓なんて、いやだから」


 何を言っているんだろう、と思った。結婚の話なんて今までに一度も出たことがないけれど、詠の中では決定事項なのだろうか。

 反論する気にもなれなかった。だって、この世界で誰かと一緒にならないといけないのなら、その相手は詠しかいない。

 これは、消去法。だって、零がいないから。


「別に、そんなこと気にするの?」

「おれは、死んでもおまえと二人きりがいいよ。死んだあとに零が一緒にいたら、おれが生涯かけておまえの不幸せを塗り替えた意味がなくなる」

「ずいぶんとぐらついた完璧主義だね」


 なるほど、詠はこの関係を確定させたいらしい。あたしが二度と零に乗り換えないように。一生、あたしの気持ちを独り占めするために。

 片割れが死んでもなお繰り広げられる兄弟喧嘩は、今のところ生者に軍配があがっている。二卵性双生児の彼らを引き裂いた不幸の元凶は間違いなくあたしだった。だけどね、もう、これ以上何をすればいいのかわからないの。