解けない呪いに絆されながら、唇にやってきた柔らかい感触を受け入れた。詠は静かに目を瞑って、あたしにキスをしている。
ゆっくり目を瞑る。ここにいるのが、詠でも、零でも、どちらでもよかった。もう、境目なんてぐちゃぐちゃになっている。
「……」
唇と唇の間を舌が割り、詠の口から、さらさらに噛み砕かれた星屑を流し込まれる。
いつからだろう。詠の口から与えられる薬は砂利みたいな感触がしたのに、今ではきちんと星屑になった。
あのときと、同じ味。同じ舌触り。同じ影。なのに、目の前の男だけが違っている。
なんて不幸なことだろう。詠にそのつもりはないのだろうけど、彼はこんなにも完璧に、零の影を纏っている。
あの時と同じように、流し込まれた星屑を嚥下する。
「どうして毎日、口移しで飲ませるの」
そう尋ねると、詠はテーブルの上に置かれていたペットボトルを手に取り、キャップを外してあたしの左手に持たせてくれた。そのまま彼は、澄んだ瞳でこちらを見る。
「おまえの不幸を蓄積させたいから」
「は?」
「零が一日でつくりあげた強烈な不幸を塗り替えられないのなら、おれは毎日、小さい不幸を積み重ねたいの」
「趣味わる」
「おまえに言われたくねえよ」
水を喉奥に流し込む。


