零はずっと、何かに追われているみたいに焦っていた。


「さんかいも、むり、」

「どうして? 睡が詠の方見なければ、目なんて合うわけないのに。睡がわるいでしょ」


 最近、何かが入れ替わり始めていた。

 あたしが零に陶酔しかけた今、なぜか今在詠の方とよく目が合うようになった。気のせいかもしれない。だけど、確実に増えていた。

 先週も3回で、先々週は2回だ。もともと今在詠とはまったく接点がなかったし、今までに目が合ったことなんて一度もなかったのに。そんな不可思議な現象が起き始めたのは最近のことだった。

 最初は、詠と目が合った回数分だけ零にキスをされた。だけど、徐々に深い口付けの中で呼吸の仕方を覚えたあたしの態度が気に食わなかったのだろう、零の行動はどんどんエスカレートしていった。

 まだ暴かれたことのないショーツの上をはじめてなぞられたとき、おそろしいと感じた。身体の感覚も、心の醜さも、徐々に零のものにされていくみたいだった。


「これでも大事にしてあげてるんだから、自覚して」


 あたしは、行為の終着点を知っている。

 だが零は、決して行為の最終地点を目指そうとせず、あたしの身体をゆびさきで絆そうとする。そしてあたしは、あたしを溺れさせるためだけに行われる戯れに、愚かしくも感じていた。