最低なことをしている自覚はあった。

 最初は今在詠のことが好きで、彼の面影を零の中に見出していたのに、あんなことをされたあたしの弱い脳みそは、今度は零を求めていた。なんと節操もない。

 よくないな。よくないはずなのに、悪い気がしない。

 だって結局のところ、あたしが醜い興奮を抱えながらカウンター越しに話していたのは、いくら詠に似ているとはいえ、それは今在零だったわけで。

 だから、変わった。あの図書室で、あたしと零の関係は、あまい言葉で説明できるものになった。






 腰が砕かれるほどのキスで身体を嬲られたあの日から少し時間が経った。

 零に何をされたって、あたしは図書室に通うのをやめられなかった。どうしても、あの日の唇の感触が忘れられなかった。今在詠の影と今在零の影がごちゃごちゃになって、わけがわからなくなった。


「ねえ。今週は、詠と話した?」

「はなして、っ、ない」

「じゃあ、何回目が合った?」

「……たぶん、さん、かい」


 零は毎週火曜日の図書室に潜む魔物だ。あの日以来、彼はあたしと今在詠が関わりをもったかどうかをしきりに気にするようになった。


「じゃあ3回、いかせてあげる。詠のことなんて絶対思い出すな。ぼくだけを見て」