思ったよりもやわらかい。それが最初に抱いた感想だった。

 甘いな、と思っていた矢先、唇の間を舌がすり抜けてくる。突然やってきた鋭い緊張に、吐息が漏れた。


「……っ、ん」


 急な舌触りに驚いているうちに、零は慣れた手つきであたしの腰に手を回してくる。ぜんぶが初めての刺激で、思わず腰が反れた。

 なに、これ。零は、こんなことを知っているの? おとなしく、教室の隅でひっそりと息をするように生きている零に、こんな顔があるの?


「もっと、ぼくのこと意識して」


 唇が離れたその瞬間に肩で息をした。零は吐息がかかるくらいに近い距離のまま、甘く諭すように続ける。


「ぼくのこと、ちゃんと獣だって思って、びくびくしながら近づいてきてよ」


 もう一度唇が重なる。奥深く掻き乱されて、息が苦しくなる。

 腰のあたりの感覚がなくなってくる。じょうずに立てないのに、零はあたしの腰を支えながらも絶対に離してくれなかった。

 ただ、キスをしているだけなのに、意識がぼんやりとしてくる。だめだ、このままじゃ、溺れてしまう。


「れ、い、あの、ちょっと、」

「だめでしょ、ちゃんと立ってなきゃ。好きじゃないひとにキスされてるくせに、腰抜かすなんて、オカシイね」


 立てなくなるほどの興奮と酸欠で、意識が飛ぶ直前まで零は深くあたしに口付けた。

 ねえ、あたし、こういうことするの、はじめてなんだよ。それを知っててこんなことをしたのなら、零ってほんとうに狡いよ。