暗闇にふたりきり。鍵がかけられた図書室の中に情愛が絡み合うにおいがした。

 いつ、いつバレた。記憶をぐるぐると逆再生させていく。なにか失言があったのかもしれない。それとも、何かが。


「まって、あたし……」

「ぼくね、今日見てたよ。夢見さんが、体育館で詠にシャーペン拾ってあげるとこ」


 あの場面を見られていたことに対する、言い表しようのない後ろめたさが湧き上がる。きっとあたし、女の顔をしていただろうから。

 詠目当てで零に近づいたあたしの浅はかさに、零は気づいていたのだろうか。それでもなお、零は文庫本を閉じてまで、あたしの話を聞いていたのだろうか。


「……ごめんなさい」

「ううん。まあ、もっと前から知ってたんだけどね」

「え、なんで」

「ぼく、夢見さんのことが好きで、ずっとあなたのことを見てたから」


 急な事故に巻き込まれて全身がぐちゃぐちゃになったような感覚だ。

 零は、あたしのことがすきだったの? こんなに迂闊で、こんなに醜いあたしのことが?

 彼はこちらをじっとりと見つめている。あたしという存在を見つめている。隅々まで、あますところなく。

 零があたしを好きで、あたしが詠を好きでいることがすべて白日に晒されて、思惑がまとわりついた図書室には酸素が足りない。


「ぼくのこと、詠に重ねられてうれしかった?」