秋にさしかかったことで徐々に太陽がやる気をなくし、肌寒さを感じ始めるこの頃、下校時間の10分前になると、もう窓の外はすっかり暗くなっていた。


「もう帰らないと。夢見さん、椅子戻しておいてね」

「はあい、」


 カウンター前に引っ張り出した椅子を読書スペースに戻すと、零がぱち、ぱちと図書室の電気を暗くしていく。


「零、今日もごめんね、お話きいてもらって」

「いいんだよ。最後にさ、ぼくの話もきいてもらっていい?」


 薄暗い図書室でカバンを持ちながら、「なに?」と問い返す。彼はあたしの顔を見て、うすく笑った。


「内緒の話」


 ——彼は、図書室の扉の鍵を内側からかけた。

 外から図書室の扉を開けるための鍵は、零が持っている。あたしと零は、だれも入ってこれない、薄暗い密室でふたりきりだった。

 なんだか嫌な予感がする。意図と思惑が交錯して、いつのまにか深くて醜い沼に足をとられたみたいな、そんな感覚がする。


「夢見さんがすきな人って、詠のことでしょ」


 目の前の男は鍵をポケットに仕舞い、こちらに近づいてきた。