見ると、睡はおれのブランケットに身を包み、苦しそうな顔で零の名前を繰り返し呼んでいた。
おれはそのじっとりとした視線に魅入られた、哀しき双子の片割れだ。おれがただのひとりっ子になってから、もうじき4年になる。
「詠、おくすり、はやくのみたい」
零のことを忘れたいのだろう。はやく意識を沈めて、この地獄から逃れたいのだろう。だから彼女は睡眠薬を噛みたがる。
なんだか無性に腹が立った。だがこれはただの嫉妬だ。いつまでもこっちを見てくれない彼女に、当てつけのように憎しみを抱いて、自分の気持ちを誤魔化そうとしている愚か者はおれのほうだ。
「じゃあさ、質問に答えて」
「……なに」
「零と愛し合ってたって、ほんとう?」
おれは右手でペットボトルのキャップをいじりながら、零の名前を何度も繰り返す陳腐な女にナイフを突き刺す。はやく傷つけ。おまえなんか、おれだけに傷つけられればいい。
「なにそれ。なんでそんなこと聞くの?」
「おまえ、元々は零のことなんか、好きでもなんでもなかったんだろ」
「やめて」
「だって、零が」
「愛し合ってた。詠はあたしたちの何をしってるの?」
どうしたら彼女を傷つけられるだろうと考えていた。
おれってほんと、どうしようもない。この女を傷つける方法を探って、慎重にナイフを突き立てるおれは、一突きで自らの心臓を刺せる零に遠く及ばない。
なのに彼女を傷つけるのをやめられないから最悪だ。最低で最悪の他傷および自傷に意味なんてない。ずっと。


