送られた位置情報を頼りに睡を迎えに行った。睡は大学のゼミの飲み会に参加していたらしい。男子に支えられて立っていた睡を見たとき、そばに立っていた男をほんとうに殺したくなった。


「あ、夢見さんの彼氏さんですか?」

「うん、そうだからもう大丈夫です。どうも、ご迷惑をおかけしました」


 どうせ睡の意識は朦朧としている。多少の嘘は方便だ。彼氏なんかじゃないのにね。ほんと、くるしい。

 男たちからあっさりと睡の身柄を引き受け、おれは睡の肩を抱き、タクシー乗り場に向かう。


「おまえさ、なんでいつも、そんな危ない飲み方すんの」

「あたしの行動はいつだって、現世を忘れることに動機づけられてるのー」

「死んだらどうすんの」

「いーよ、別に死んだって」


 口を開けば死ぬことばかり。彼女は記憶を飛ばすような酒の飲み方をするし、たまに吐くほどに強い煙草を吸い、シーシャを延々と吸い込むことでヤニクラをむりやり起こしたりする。

 彼女は自分の意識が世界に留まることをひどく嫌うのだ。死ぬ代わりに、眠り、酔い、意識を曖昧にする。


「これ以上、周りに迷惑かけんな」

「じゃあ、迷惑をかけないように、しぬ」

「おまえはどう死んだって迷惑だよ」