睡へ

 突然のことに驚いたでしょう。こんな行為をするぼくのことを、許してください。

 あなたが図書室に通うようになるまえから、ぼくはあなたのことが好きだったとおもいます。ずっとあなたのことを、廊下ですれ違うたびに目で追っていました。だからこそ、あなたがぼく目当てじゃなくても、図書室に来てくれることがうれしかった。

 本当は、あなたがぼくじゃなくて、弟の詠に憧れているということを知っていました。ぼくはあなたのことをよく見ていたから、なんでもわかるんだよ。

 だけどぼくはあなたのことを諦めたくありませんでした。詠目当てでぼくに近づいてきたあなたを離したくなくなってしまった。だからこそ、ぼくからの告白にあなたが頷いたとき、神様がぼくの浅はかな願いを叶えてくれたと思いました。

 あなたを抱くときはいつも、なんだか愛されているような錯覚におちいりました。すこしずつ、睡が言ってたみたいに、深いところまで繋がっていけるような気持ちになりました。

 だから、あなたがぼくと心中したい、と本気で言ってきたあの日の放課後、なんともいえない高揚感に襲われました。やっと、ぼくのことを見てくれたと思いました。長い時間をかけて、あなたはぼくのことを好きになってくれたんでしょうか。そう信じても良かったんでしょうか。もしあなたがまだ、詠のことを好きでいたとしても、ぼくにはそう信じさせてください。

 ぼく、あなたのことを狂おしいほどに愛しているんです。だけどあなたはさっき、「死ぬのがすこしこわい」と言いました。ぼくは、こうみえて極めて感情的な人間です。あなたの感情を大切にしたい。だけどぼくはやっぱり、あなたにとって忘れられない人でありたい。

 だから、こんなことをしました。これで、ぼくの存在はあなたの記憶に深く焼き付けられるだろうと考えました。あなたを傷つけることはわかっているけれど、ぼくはこうすることで、一生、あなたと深いところで繋がりたい。

 ずっと、ぼくのことを、憶えておいてください。

 今在零