最初に目についたのは、人がふたり倒れている光景だった。男がひとり、女がひとり。それぞれ、今在零と夢見睡だ。すぐにわかる。だって、ずっと一緒にいた兄と、ずっと目で追っていた彼女だったから。


「……あ、」


 死んでる、と思った。なんとなく、死の匂いがした。

 だって、零の方は血を流してる。その床に落ちてるナイフ、どこで買ったの。どこを刺したの。腹を刺したのか、胸を刺したのか、これじゃわからない。まって、ていうか、なんでおれ、こんなに冷静なの。いや、グロいでしょ、これ。


「夢見さんも、しんだ?」


 彼女の左手は、零の右手と固くむすばれていた。なんだかすこしだけ、彼女と手を繋げる零が羨ましくて、最悪だった。

 思えば半分くらい、正気を失っていたんだと思う。呆然としながら、すぐに助けを呼ぶこともできず、お互いを愛して死んでいるふたりを眺めていた。


「まって、しんでる? 零が?」


 誰かに向けて言っているというわけでもない言葉をわざわざ発してしまうのは、これが趣味のわるい悪戯であることを心のどこかで期待していたからだ。

 そして、どうしようもなく最悪なおれは、腹から血を流す同胞よりも、夢見睡の姿に夢中だった。

 無防備に倒れている姿が、かわいい、と思った。自分が狂っている自覚はきちんとあった。

 彼女の姿を眺めていると、彼女の制服のブレザーのポケットに、白い封筒が差し込まれていることに気づく。

 それを静かに抜き取ってみる。裏面には零の字で、「睡へ」と書かれていた。手紙だろうか。

 おれはそれを自分の着ているジャージのポケットに差し込んだ。気まぐれな悪魔が、そうしろと頭のなかで囁いたからだ。

 そのとき、彼女の指先がぴくりと動いた。