高校2年の、そろそろブレザーの下にセーターを仕込みたくなる時期だった。先輩が部活を引退し、新しくサッカー部の主将に任命された夏からだいぶ時間が経って、すっかり気温も落ち着いて過ごしやすくなった頃だった気がする。

 部活終わりにスマホを見ると、〈部活が終わったら図書準備室に来て〉と零から連絡が入っていた。

 送信時刻は約2時間前。図書準備室、という単語になんだか妙な予感がしたので、一緒に帰る予定だった友人を部室に待たせて、おれは図書室に向かった。

 図書室にはだれもいなかった。カウンターの奥にある図書準備室の扉には、すっかり日に焼けて黄ばんだ〈関係者以外立ち入り禁止〉の張り紙がある。


「零、いる?」


 なんとなく、部外者のおれが勝手に中に入るのは憚られる感じがして、扉越しに声をかけてみる。

 中から返事はない。

 扉を3回ノックしてみる。それでも返事がない。

 ドアノブに手をかけてみると、鍵はかかっていないようだった。なんだ、開いてんじゃん。


「しつれいしまーす」


 扉を奥に押したとき、鼻腔をつく異臭に気がついた。何かが間違っている、という感覚。だけどおれは扉をすべて開けてしまった。