急に放たれた、零と夢見睡の名前にかるく絶望した。理由はふたつ。

 まず一つは、零と夢見睡が恋人同士であるという事実が、何気なく日常に溶け込んでいるという意味での絶望。夢見睡のとなりにいるのはおれじゃなくて零で、それをこの場の全員が認めているという悲劇に対して、やりきれない、と思う。

 そしてもう一つは、もちろん、零があの夢見睡を抱いている可能性について。

 嘘だとは信じたいけれど、おれは、あのふたりが図書室でキスをしていた事実を知っている。その先を手早く、扉の奥の準備室で済ませている可能性だって、ないとは言い切れない。

 その場の視線すべてがこちらに向いている気がした。零の双子の弟であるおれの発言を、全員が待っている。


「……さあ。アイツのそういうとこ、想像したくねーな」


 じょうずに返事ができただろうか。男兄弟のいる帰宅部の男が、スマホをいじりながら、あーね、と返事をする。

 いつの間にか会話は、好きなアーティストのライブの話に移ろった。筋道のない話題の連鎖反応のなかで、珍しく置いて行かれた気分になり、なぜか自分がこの世界のなかでひとりきりになったような気がした。