その後、付き合いはじめたばかりの恋人に別れ話を切り出されたとき、ぜんぜん悲しくなくてびっくりした。
「詠くんのことが好きかどうかわからなくなっちゃった」と声を震わせながら話す、もうすぐ他人になる女の子を前にして、「おれもあなたのことを好きかどうか、ずっとわからなかったのよ」という言葉を言うかどうか迷って、でもどう考えても言わない方がいいに決まっているからやめた。
女の子と長続きしないのはどうしてだろう。おれの性なのだろうか。零のほうは、夢見睡を離すつもりはないと言わんばかりに、着実に一緒の日々を積み重ねているというのに。
それ以降、女の子で遊ぶことにも飽きて、おれはひとりになった。
「図書室って正直、ヤれそうだよな」
ある日、昼食を共にしているメンバーのうちのひとりがそんなことを言った。昼休みの教室はいつも通りのざわめきに包まれていて、向こうでは化粧の濃い女子たちが大声で笑っていた。
にやにやと笑いながらミルクティーを口に含んだバレー部の友人に対して、「何の話?」と問いかける。
「ほら、図書室ってさ、図書委員しか入れない準備室があるじゃん」
「そんなのあんの?」
「あるんだよ。しかも鍵かけれんの。内側から」
「密室? マジ?」
「マジだってー。男バレの後輩が言ってたから」
「その情報信用なんねー」
朝にコンビニで買った焼きそばパンに大口でかぶりつく。べつに美味くない。安いから買ってるだけ。
咀嚼して、パンと焼きそばがぐちゃぐちゃになったものを嚥下する。うん、やっぱり美味くない。


