あの一件から、おれは夢見睡を意識するようになった。だが、あの日以来おれと彼女の間でなにかが起きたわけでもないし、話すことすらないまま時間だけが流れた。
そもそも俺には、陸上部のマネージャーをしている派手な恋人がいた。彼女のことはそこそこ好きだったと思う。
それなのに、廊下で夢見睡とすれ違うたび、彼女を目で追うようになっていた。数回に1回くらいはなぜか彼女と目が合ってしまって、そのたびに知らないふりをして目を逸らした。
スカートだって、別に短くない。顔つきだって派手じゃない。化粧だって、おれの周りにいる女子と比べればずいぶんと薄かった。
脳内だけは性犯罪者予備軍のおれは、そんな夢見睡が乱れるとき、どうなってしまうのだろうとよく想像した。
たとえば、少し長めのスカートを割り、そのなかを無理やり自分のモノで満たしたとしたら。いつもは慎ましく過ごす夢見睡が顔を赤くして、思い切り哭いたら、どんなふうになるのだろう。そんなことばかりを考えた。おれ、ほんとうにどうしようもないな。
メイクが厚くて、演技がどうかもわからない喘ぎ声をあげて、まんざらでもない顔で股を開く派手な恋人が嫌いなわけじゃなかった。
だけど、きっとはじめてであろう行為に戸惑いながら、普段は肌の露出を控えめにしている彼女の両脚をむりやり広げて、そのなかに欲望をぶち込んだときの夢見睡の苦悶の顔が見てみたいと思ってしまった。
自分の欲望が暴走しそうで恐ろしかった。だからこそ、無闇に夢見睡に近づくこともせず、彼女の姿を目で追う作業だけを遂行していたのだ。


