急いで歩夢に駆け寄ると、眉間に皺を寄せていた顔をフワリと緩めた。その顔は嬉しそうに微笑んでいる。こんな時でもこの人は微笑むのか。私は歩夢の手を取って呼びかけた。
「歩ちゃん、しっかり!私の声が聞こえる?歩ちゃん!」
しかし歩夢は愛花に返事を返さない。ボーッと愛花を見ていた目がゆっくりと閉じていく。それを見て、私の身体から血の気が引いていく。
「ダメ!歩ちゃん目を閉じないで!歩ちゃん!歩ちゃん!」
何度も何度も歩夢に声をかけ続けていると、救急車のサイレンが聞こえてきた。誰かが呼んでくれたのだろう。歩夢を確認した救急救命士達は急いでストレッチャーに乗せ救急車に運んだ。私は救命士さんに促され救急車の中へ。救命士さん達は歩夢の胸の音を聞き酸素マスクを付ける。それから反応を見ながら心臓のモニターなどを付けながら病院へと向かう。救急車に備え付けられているテレビのようなモニターに、心臓の動きを見る線が描き出せれ、ピコン、ピコンと音を立てる。
良かった。
心臓は動いている。
歩ちゃん、お願い目を開けて。
自分の両手を握り絞めながら、祈るようにそれだけをひたすら心の中で願った。
病院に着くと歩夢はすぐに手術室へと運び込まれていった。私は手術室前で待とうとしたところを看護師さんに促され処置室へ。処置室の椅子に座らされ、始めて自分の手や膝から血を流していたことに気づいた。
「手や膝の他に痛いところはありますか?」
先生にそう聞かれ私は首を左右に振った。


