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歩夢の事故の数週間前――――。
愛花は白衣を着て、清潔感が出るように髪を少し高い位置で一括りにしたポニーテールし、カウンセリング室で話を聞いていた。目の前には中学生の女の子。少女は黙ったまま下を向き、青い顔をしていた。私はゆっくりと立ち上がると、ハーブーティを入れ少女の前に差し出した。
「どうぞ。ゆっくり飲んでみて」
愛花の長い髪がサラリと揺れるのを見ながら少女はそっと手を伸ばし、ティーカップを受け取った。それを見て愛花は椅子に座り直す。
「えっと、狩野涼花ちゃん。私はカウンセラーの神楽愛花です。今日は来てくれてありがとう。あなたの顔が見れただけで私は嬉しいです。涼花ちゃんが話したくなったタイミングで話してくれてかまわないからね」
この子は学校で虐められ、保健室登校になった。その後、更に彼女を追い込むようなことがあり、学校に行けなくなったと聞いている。この子には時間が必要だ。ゆっくりで良い。外に出ることから初めて行こう。
「今日も暑かったでしょう?汗掻いてるね」
ハンカチでそっと汗を拭いて上げると、涼花の顔が見る見るうちに染まっていく。
ん?
どうしたのだろう?


