僕は今の自分の格好を見た。ズボンははいているがシャツのボタンは外され、はだけた状態で、目の前には吉川さん。まるで浮気現場を見られた男のようだ。僕はすぐに愛花さんを追いかけた。
「愛花さん、待って!」
少し離れた場所にいた愛花さんが、一瞬だけこちらを振り返ったが、すぐに前を向いて歩き出してしまった。
ダメだ。
行かないで。
何とか横断歩道の真ん中で愛花さんの右手を取った。
「愛花さん、話を聞いて!」
愛花さんは何も言わずに、僕の手を振り払う。
僕は愛花さんの背に向かって手を伸ばそうとしたとき、曲がってくる車に気がついた。
しまった。
横断歩道の信号は赤、車は僕たちに向かって突っ込んでくる、僕は咄嗟に愛花さんを突き飛ばした。その瞬間、体にドンッという衝撃が走る。強烈な痛みに顔をしかめると、愛花さんがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。
良かった。
愛花さんは無事だった。
愛花さんの無事を確認して僕は目を閉じた。
「歩ちゃん!」
愛花さんの声が耳の奥で響いた。


