今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う


「歩夢、酷い熱じゃないか!ここは良いからすぐに帰りなさい」

「いえ、大丈夫です。これから会議ですから……」

「バカを言うんじゃない。そんな状態で会議に出ても迷惑なだけだ。帰りなさい」

 父に叱られるのは久しぶりだ。まるで子供の頃のようで、フッと笑ってしまった。すると、父もそれに気づいたか柔らかく笑った。

「歩夢、ムリはダメだよ。大丈夫だから帰るなさい。ゆっくり休んで温かいご飯を食べなさい。良いね?」

「はい。分かりました」

 歩夢はゆっくりと立ち上がり、オフィスを出た。外は相変わらず暑く、日差しを浴びただけで目眩を起こしそうだ。このままではまた何処かで倒れそうなため、タクシーを止めることにした。しかしこんな時に限ってタクシーはなかなか捕まらない。もうろうとする中で誰かがタクシーを止め僕をタクシーに乗せる。

 ……あなたは……誰だ……?

 トントントンっと包丁がまな板を叩く音がする。そして鼻腔をくすぐる味噌汁の匂い。

 これは……!