僕は自分の机の上のパソコンを開いた。そこからは仕事に集中する。夢中でパソコンを叩いていると社長である父に肩を叩かれた。
「歩夢もう退社時刻だよ。今日はもう帰りなさい」
「いえ、もう少しやってから帰ります」
そう言った僕に、社長は「はぁ」と息を吐き出し眉を寄せた。それは社長の顔では無く、息子を心配する父親の顔だった。
「歩夢、今日中にしなければならない仕事はもう無いはずだよ。今日はもう帰りなさい。これは命令だよ」
父から優しい命令が出された。
「分かりました。お疲れ様でした」
僕は一礼すると、カバンを持ち外に出た。今日は木曜日、週末では無いからきっと愛花さんはいないだろうと思い『ラビリンス』へと向かった。角を曲がればそこに懐かしい看板が見えてくる。そこで歩夢は足を止めた。入り口で話をしている会いたかった人の姿に目が釘付けとなった。
愛花さん……。
徹子ママと話をしながら嬉しそうに微笑んでいる。耳を澄ますと二人の声が所々聞こえてきた。
「やっぱり私の事を分かってくれるのは徹子ママだけ……」
そんな声が聞こえてきた。それから愛花さんは徹子ママに抱きついた。


